古民家インタビュー
【活用事例インタビュー】 No.2「ヨナミネハウス」
座間味村は阿嘉島の集落の西外れに、静かな古民家バーがあります。名前はBar ヨナミネハウス――。「えーっ? 離島にバー?!」って驚く人も多いかもしれませんが、実はマスターの与那嶺聡さんは、那覇の老舗のバーで修行した本格派のバーテンダーです。離島とは思えない大人っぽい雰囲気と、島の人たちが集まる素朴さを併せ持った不思議な空間をクールに仕切る与那嶺さんのお話に、ちょっと聞き耳を。
きれいな外観のお家ですね? どれくらい古いんですか?
元々この家は祖父が建てたもので、築年数は少なくとも80年はあまるだろうといわれています。座間味がまだ鰹漁とカツオブシ製造で儲けていた頃に建てられたらしいです。僕の親父が小学校の頃に島を出て、親戚のおばさんに貸したりしてまもってきた家だったんです。屋号はクシシレーグァと呼ばれてます。
6年ほど前にこの家をみたときの第一印象は、「かっこいい」でした。懐かしさではないんです。僕自身は幼稚園の頃にしか来たことがなくて、ほとんどこの家の記憶がありませんから。ずっとコンクリートの家で育ったけれども、この家の佇まいはかっこよかった。
そうすると、この家に惹かれて祖先のふるさとに里帰りしたって感じですか?
その頃は、学生時代から10年ほど続けてきた仕事に一区切りをつけて、自分の店を持ちたいと思いはじめていたときだったんです。それでこの家を見て、昔ながらの雰囲気とバーを組合せてみるのもいいかな、って思いました。子どもが生まれて1年経つ頃で、子育てしやすい環境を探していたというのもあります。嫁さんが「那覇は都会すぎて落ち着かない」ってこぼしていたのも気になっていたんです。
思い切って那覇から引っ越しましたが、島の人にはよくしてもらいました。まったく島と縁がないわけではなく、僕の祖父は漁協の組合長まで務めたような人だったから、孫が帰ってきたという認識だったんでしょうね。親戚もいますし。今でも「拝み事はこうしなさいよー」とか「屋敷の御願はこうだよー」とか教えてくれて助かってます。
島の人もよく飲みに来ますか?
僕が越してきた頃、島には他に居酒屋が1軒あったんですが、それは集落の東側だったんですよ。やっぱり東(アガリ)と西(イリ)っていう対抗意識があるみたいで、「西にも飲み屋ができてよかったさー」って言ってもらいましたよ。夜の7時から開けていますが、シマ時間もあって、忙しくなるのは10時くらいが多いですね。
メニューを見てもらうとわかりますが、うちは沖縄料理を出すようなお店じゃないんです。あくまでバーが主体で、フードはピザとかオリーブとかおつまみのような洋風の料理が多いかな。だから観光客の方の中には、見た目と中身のギャップに驚かれる人もいますね。でも、「阿嘉でカクテルが飲めるなんて」と喜んでいただいてます。
阿嘉島はダイビングの島で、毎年いらっしゃるようなリピーターも多いんです。そうしたダイバーは行きつけのダイビングショップがあって、もうほとんど親戚づきあいのような関係になっていますが、おかげさまでうちにもお土産を持って毎年来てくださる方がいます。だけど、ダイバーは毎日海に潜るので、深酒をしない方が多いですね。食事しながらその日のダイビングログをつけている人もたまにいらっしゃいますよ。
与那嶺さんならではの「こだわり」ってありますか?
昔の阿嘉島の民宿って、どこまでが家族の生活でどこまでがお客さん相手の商売なのかわからないようなところが多かった。いい意味でアバウトでフレンドリーだったんです。僕はそういう島が持つ雰囲気をつなげていきたいなって思ってます。外から見るとふつうの民家だけど、中はくつろげるバーでもある。だから、あえて目立つ看板をつくらなかったんです。実は最初の2年間はこの家で家族3人が暮らしていたんですよ。お客さんが帰ると、客間にふとんを敷いて寝るっていう生活でした。
昔ながらの景観をまもるっていう意識はあります。確かに木造の家は管理は大変です。外から見えるようにと、ヒンプンをとったりもしました。だけど、昔の石造りのフールは今も残しています。屋敷の裏に居住用の別棟を建てるときも、母屋の屋根からはみ出さないように平屋にしたんです。
那覇の友だちが遊びに来て、「いいねぇ、俺も住みたいよ」とか「うらやましいなあ」とか言ってくれるんです。そういうふうに感じるウチナーンチュが一人でも二人でも増えてくれるといいなと思います。
基本情報
住所:〒901-3311 沖縄県座間味村字阿嘉144
電話番号:098-896-4786
営業時間:19:00~24:00
定休日:火曜(都合により休みの場合があるので事前に確認を)
ウェブサイト;http://www.urinain.com/users/akajima/